日経サイエンス  2020年7月号

特集:核酸医薬

遺伝性プリオン病  発症前治療への挑戦

S. M. バラブ E. V. ミニケル(ともにブロード研究所)

プリオン病は,脳に存在するPrPと呼ばれる正常なタンパク質が折り畳み異常を起こしてプリオンになり,そのプリオンが周囲のPrPを同様に変形させることで起こる致死性の神経変性疾患だ。汚染された肉などを介した感染による獲得性プリオン病は悪名高いものの人間の症例の1%以下。多くは自発的に発症する孤発性プリオン病で,PrPをコードしている遺伝子の変異が原因で起こる遺伝性プリオン病もある。アンチセンス医薬によってPrP分子,つまりプリオン化する前の正常なタンパク質の量を減らし,遺伝性プリオン病の発症を未然に防ぐ挑戦が米国で始まっている。



再録:別冊日経サイエンス256『生命科学の最前線 分子医学で病気を制す』

著者

Sonia Minikel Vallabh / Eric Vallabh Minikel

人はハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が共同で設立したブロード研究所でプリオン病の治療法を開発する研究室を運営している。彼らはソニアが致死性の病になるリスクが高いことが判明した後に転職して医学研究者になった。

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BSE阻止の決め手 発病前にプリオンをつかめ」,S. B. プルシナー,日経サイエンス2004年10月号。

原題名

Preventing Prions(SCIENTIFIC AMERICAN March 2020)

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