日経サイエンス  2020年7月号

特集:COVID-19 パンデミック

ワクチン迅速開発へ新手法 ウイルスの核酸を合成

C. シュミット

COVID-19パンデミックを完全に終息させることがもしできるとしたら,その唯一の手段は有効なワクチンの開発だろう。4月前半までに,19カ国のおよそ80の企業と研究所が,ワクチンの開発を開始した。その大半が,インフルエンザワクチンなどの製造に用いられてきた従来のアプローチではなく,遺伝子工学を駆使して作る新たなワクチンの開発を目指している。

 

従来法では,鶏卵や動物細胞などでウイルスを培養し,不活化したり,タンパク質の一部を取り出したりしてワクチンとして用いる。これに対して新手法では,ウイルスのRNAの一部や,そのRNAのもとになるDNAを人体に投与して,体内でタンパク質を作る。ウイルスを直接培養する必要がないため,迅速に開発できるのが利点だ。

 

実際,この方法でいくつかの企業がすでに初期の臨床試験にこぎつけた。だが人間に投与するDNAワクチンやRNAワクチンはまだ実用化の例がなく,今後の大規模臨床試験も迅速にクリアできるかどうかは不透明だ。




再録:別冊日経サイエンス246「感染症Ⅱ 新型コロナと闘う」

著者

Charles Schmidt

メイン州ポートランドのフリーランスジャーナリスト。健康・科学分野で活動している。

原題名

The Vaccine Quest(SCIENTIFIC AMERICAN June 2020)

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