日経サイエンス  2020年5月号

特集:宇宙の化学進化

地球上とは温度と圧力が大幅に異なる宇宙に存在する分子を見つけて調べるのが宇宙化学だ。そうした分子の多くはよく知られた地球上の分子とは異なる。最も単純な原子は水素,次がヘリウムで,初期宇宙ではこの2つがほとんどだった。では,最初にできた分子は? ヘリウムは希ガスで安定しているから,最初の分子は水素分子──と考えるのは地上の条件に縛られた見方で,実は水素とヘリウムが結びついた水素化ヘリウムのイオンHeH+だったと考えられている。この特殊な分子が近年の観測でついに確認された。また宇宙誕生から約10億年後の銀河での重元素ガス雲の分布状況が判明。広域的な化学進化の状況がおぼろげながら見え始めた。

 

 

宇宙で最初にできた分子  R. C. フォーテンベリー
原始銀河でまき散らされた重元素  中島林彦 協力:大内正己

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