
「時間結晶」は著者でノーベル賞物理学者のウィルチェックが2012年に提案した新しい概念だ。
(通常の)結晶では原子や分子が一定の間隔で周期的に配列している。ウィルチェックは「空間と時間は同等である」とするアインシュタインの相対性理論の主張をヒントに,結晶が空間方向に示す性質と類似の性質が時間方向にもありえるのではないかと考えた。つまり,時間結晶とは一定の時間間隔でパターンを繰り返す物質の状態のことだ。
時間結晶の概念に合致する物質は2017年に最初に発見され,その後も増え続けている。これらの物質によって,かつてないほど高精度な時計が実現すると期待されている。
著者
Frank Wilczek
マサチューセッツ工科大学の理論物理学者。強い力の理論の研究で2004年に ノーベル物理学賞を受賞。2012年に時間結晶の概念を提案した。
原題名
Crystals in Time(SCIENTIFIC AMERICAN November 2019)