日経サイエンス  2020年3月号

特集:脳のコネクトーム

神経回路網はどのように知性を生み出すのか

M. ベルトレロ D. S. バセット(ともにペンシルベニア大学)

脳から意識がどのように生まれるのか? この疑問から生まれた新たな学問分野「ネットワーク神経科学」では,読み書きや計算,簡単な動作といった行動を可能にしている脳領域間の結合を,グラフ理論という数学の手法を使ってモデル化する。視覚や注意,自制などの認知能力を生み出す機能的ネットワークを形作っている身体的な神経経路をモデル化する。異なる脳領域間の入念に調整された相互作用から,精神活動が立ち上がってくる仕組みが見えてきた。うつ病などの精神疾患を診断・治療する新手法の開発など,実用的な恩恵も期待できそうだ。



再録:別冊日経サイエンス255『新版 意識と感覚の脳科学』

再録:別冊日経サイエンス243「脳と心の科学 意識,睡眠,知能,心と社会」

著者

Max Bertolero / Danielle S. Bassett

バセットはペンシルベニア大学生物工学科の准教授で,物理系と生物系のネットワークを研究している。2014年にマッカーサー・フェローになった。ベルトレロはバセットが率いる複雑系グループのポスドク研究員。カリフォルニア大学バークレー校でシステム神経科学の博士号を,コロンビア大学で哲学および心理学の学士号を取得。

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シミュレーションで解く脳の複雑性」,C. ジンマー,日経サイエンス2011年4月号。

原題名

How Matter Becomes Mind(SCIENTIFIC AMERICAN July 2019)

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