日経サイエンス  2020年3月号

フロントランナー挑む 第99回

南海トラフ地震の描像 シミュレーションで迫る:堀高峰

久保田啓介(日本経済新聞編集委員)

30万人超の死者が発生するとされる南海トラフ地震
最新の地震学の知見から直前予知は不可能と考え防災対策の転換を主導
研究で地震の姿を明確にして,事前の備えに努めることを訴える

 

西日本の太平洋沿岸でマグニチュード(M)9級の南海トラフ地震の発生が懸念されている。政府の想定によれば死者は最悪32万人,経済被害220兆円に及ぶ巨大災害になる。海洋研究開発機構(JAMSTEC)地震津波予測研究開発センター長の堀高峰は,その発生を予測する研究に1990 年代末から携わってきた。「直前予知は不可能だが,長期的な予測によって被害を減らせる」と考え,シミュレーションを駆使して詳細な地震像を描こうとしている。        (文中敬称略)




再録:別冊日経サイエンス248『科学を仕事にするということ 未来を拓く30人』

堀高峰(ほり・たかね)
海洋研究開発機構地震津波予測研究開発センター長。1970年三重県生まれ。1993年京都大学理学部卒。1998年京大大学院理学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て,海洋科学技術センター(現海洋研究開発機構=JAMSTEC)へ。2019年4月から地震津波予測研究開発センター長。政府の地震調査委員会長期評価部会,地震予知連絡会の委員も務める。

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