日経サイエンス  2020年2月号

特集:量子超越

2019年10月,グーグルが,超電導素子を使った量子コンピューターで,世界最速のスパコン「サミット」を超える計算を実行したと発表した。たった53個の量子素子で,数万のGPUと10ペタバイトのメモリーを持つスパコンにできない計算を実行したという。量子力学の「重ね合わせ」を記憶媒体として使うことで莫大な並行計算を実行し,計算を指数的に加速するという量子コンピューターの計算原理が,初めて目に見える形で実証されたといえるだろう。ただし今回実行したタスクは量子超越を示すために作った特殊な問題で,実用性はない。また現在のマシンは演算を長く続けられず,実行できるタスクには厳しい制限がかかる。そうした制限の中で,量子コンピューターの桁違いの計算能力を活用し,何か意味のある計算ができるだろうか。化学計算と機械学習という2つの方向で,探索が進んでいる。

 

グーグルが作った量子コンピューター

古田彩 協力:藤井啓祐

 

化学計算・機械学習 量子コンピューターの2つの挑戦

御手洗光祐 監修:藤井啓祐