
物質を透過しやすい性質を持つミュー粒子という素粒子を使って
ユニークな顕微鏡の開発に取り組んでいる
実現すれば生きた細胞も観察でき,科学の新たな知見が得られそうだ
ミュー粒子(ミュオン)は電荷を持ちながら物質を透過する力も強く,ユニークな素粒子だ。ピラミッドや火山の内部の透視に利用され,老朽建造物や高速道路などの点検にも応用が期待される。ミュオンを細いビームにして微細な世界をのぞくことができれば,細胞を生きたまま見ることも可能になるはずだ。高エネルギー加速器研究機構(KEK)研究主幹・教授でJ-PARC(大強度陽子加速器施設)センター 物質・生命科学ディビジョン副ディビジョン長の三宅康博はミュオンに魅せられ,ミュオン顕微鏡の実現に迫ろうとしている。 (文中敬称略)
三宅康博(みやけ・やすひろ) 高エネルギー加速器研究機構研究主幹・教授。1956年大阪市生まれ。1984年東京大学大学院原子力工学系修了,加ブリティッシュコロンビア大学博士研究員,日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)をへて1986年東京大学理学部附属中間子科学研究施設助手。同実験施設と高エネルギー加速器研究機構(KEK)の統合に伴いKEKへ移り2004年教授。2015年研究主幹・教授に。2018年J-PARCセンター 物質・生命科学ディビジョン副ディビジョン長を兼務。