
私たちは日常生活で直面しているリスクをどれくらい正確に理解しているのだろうか。
人々に溺死や肺気腫,殺人などによる年間の死者数を見積もってもらった調査によると,私たちは殺人や竜巻などの人目を引く,あるいはよく報道される死因のリスクを過大評価し,卒中や喘息など,あまり注目されない死因のリスクを過小評価するようだ。また,別の調査によると,人々は原子力など大惨事を広範囲に引き起こす可能性のある技術のリスクを専門家よりも高いと判断する傾向にある。非専門家は,非常に悪い事態がある年に起こりうる可能性を重視しているのだ。
再録:別冊日経サイエンス243「脳と心の科学 意識,睡眠,知能,心と社会」
著者
Baruch Fischhoff
心理学者。カーネギーメロン大学工学・公共政策学科および政治・戦略研究所のハワード・ハインツ記念教授。米国科学アカデミーおよび米国医学アカデミーの会員で,リスク分析学会の元会長。
原題名
Tough Calls(SCIENTIFIC AMERICAN September 2019)