日経サイエンス  2019年9月号

特集:ワクチンの予想外の功罪

デング熱ワクチンの混迷 抗体依存性感染増強

S. ヤスミン(スタンフォード大学) M. ムカジー(SCIENTIFIC AMERICAN 編集部)

毎年3億9000万人以上がデングウイルスに感染している。デングウイルスに初めて感染した人は大半が感染に気づかないが,再感染した場合には命を落とすことがある。デングウイルスへの再感染がなぜ初感染よりもはるかに致死的なものになりうるかについては,長年論争の的となっている理論「抗体依存性感染増強(ADE)」によって説明できる。

 

初めて認可されたデング熱ワクチン「デングワクシア」は,デングウイルスへの感染歴のない子供に対しては初感染と同じように作用するように見え,後に感染したときの症状を重篤化させている可能性がある。この現象とADEの関係についてはまだ結論が出ていない。
 

 
再録:別冊日経サイエンス238「感染症 ウイルス・細菌との闘い」

著者

Seema Yasmin / Madhusree Mukerjee

ヤスミンはスタンフォード大学医療コミュニケーションイニシアチブのディレクター。同大学で科学ジャーナリズムと世界の医療に関するストーリーテリングを教えている。エミー賞の受賞歴がある記者兼作家で,医師でもあり,本誌に頻繁に寄稿している。ムカジーはSCIENTIFIC AMERICANの科学と社会に関する記事の編集主任。

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蚊と戦う」,D. ストリックマン,日経サイエンス2018年11月号。

原題名

The Dengue Debacle(SCIENTIFIC AMERICAN April 2019)

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