
かつて海から陸に上がった四肢動物たちは,トカゲやサンショウウオのように,肘(ひじ)や膝を外側に張り出し,地を這うように歩いていた。イヌやシカ,ヒトのように足を体からまっすぐ下に下ろして歩く動物が登場したのはそれから1億年ほど後,三畳紀が始まったころだ。その後,二足歩行する恐竜やワニの仲間が登場し,歩き方の多様化が進んで,後に恐竜が繁栄するきっかけとなった。
ここでひとつ疑問が浮かぶ。何億年も前に絶滅した動物たちの歩行時の姿勢を,一体どうやって突き止めたのだろうか。体の構造は骨の化石からわかるが,化石は私たちが博物館で見ているような姿で埋まっているわけではない。運よく多数の骨が見つかっても,それらがどんなふうにつながり,どのように動いていたかまではわからない。
だが動物の歩行時の姿勢は,自然に到達できる高さや運動の効率などに影響する。エサを取る方法や,生活空間の広さをも左右する。生物の進化を生活と環境の関わりの中でとらえる最近の古生物研究において不可欠な要素だ。研究者たちは,動くことのない化石を手がかりに,誰も見たことのない絶滅動物たちのよりリアルな姿と動きに迫ろうとしている。
協力:藤原慎一(ふじわら・しんいち) 名古屋大学博物館講師。2008年に東京大学理学系研究科で博士(理学)を取得。東京大学総合研究博物館日本学術振興会PD特別研究員,同特任助教,名古屋大学博物館助教を経て2018年より現職。2018年日本古生物学会学術賞。専門は機能形態学,古脊椎動物学。
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トリケラトプス/プロトケラトプス/パレオパラドキシア/下方型/側方型/匍匐型/足跡化石