
近年,ほとんどの国は国威発揚だけを目的に単独で宇宙に行くわけにはいかなくなっている。再び他の惑星状天体に旅しようというなら,国際協力が必要となる。この考え方を最も明確に示したのが,欧州宇宙機関(ESA)長官のヴェルナー〔Johann-Dietrich (“Jan”) Wörner〕だろう。
彼は2015年,「ムーンビレッジ」の構想を提唱した。月面に設ける共同のキャンプ地のようなものだ。各国や民間企業,大学,非営利組織,あるいは個人でも,人間やロボットを月に送り,科学研究から探査,商業活動まであらゆるタイプの取り組みでの参画が歓迎される。この国際的・協働的な性格を保証するため,このプロジェクトの公式な運営主体はESAではなく,オーストリアのウィーンに本部を置く「ムーンビレッジ協会」という非政府組織になっており,グループや個人に参加の扉を開いている。
ムーンビレッジの目的,目指すべきは月か火星かという議論,この構想をいま進める理由について,ヴェルナーに聞いた。
原題名
Come One, Come All(SCIENTIFIC AMERICAN July 2019)