日経サイエンス  2019年8月号

特集:アポロから半世紀 人類,月へ

月誕生に新説 「シネスティア」

S. J. ロック(カリフォルニア工科大学) S. T. スチュワート(カリフォルニア大学デービス校)

月は45億年近く前に,原始地球と別の原始惑星が起こした破局的な衝突の結果として生まれた。月が地球の衛星としてはかなり大きいことや月に水がないことをうまく説明できるため,この「ジャイアント・インパクト説」は月の起源に関する科学議論を数十年にわたってリードしてきた。だが月の組成が地球と不気味なほど似ていることなど,月のその他の性質は容易に説明できない。月の誕生と月の組成が妙に地球と似ていることを説明するため,「シネスティア」というまったく新しいクラスの天体が提唱された。衝突によって,惑星ともデブリ円盤とも異なる中間的な天体が生じたという考えだ。惑星形成の過程ではシネスティアが生じるのが宇宙の通例なのかもしれない。

著者

Simon J. Lock / Sarah T. Stewart

惑星科学者のロックはカリフォルニア工科大学のポスドク研究員。スチュワートはカリフォルニア大学デービス校の惑星科学・地球物理学の教授。シネスティアに関する研究で2018年にマッカーサー財団から助成金(いわゆる“天才賞”)を受けた。

原題名

Origin Story(SCIENTIFIC AMERICAN July 2019)

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