
ジェット気流が大きく蛇行すると,夏場の豪雨や熱波につながる。この蛇行パターンが停滞すると,そうした悪天候が何日も続く。ジェット気流の蛇行が大気の共振によってどのように増幅されて異常気象がさらに悪化するのか,量子力学で用いられている「WKB近似」という数学的解析手法によって説明できる。「ロスビー波」という大気の振動が一種の共振によって増幅し,蛇行ジェット気流の停滞を招くことが示された。2050年ころまでは石炭火力発電所から排出されるエアロゾルがこの悪化を抑えるが,脱硫装置の設置が進むにつれ再び悪化するだろう。
著者
Michael E. Mann
ペンシルベニア州立大学の大気科学の教授で地球システム科学センター所長。著書・共著書に「Dire Predictions」,「地球温暖化論争 標的にされたホッケースティック曲線」(邦訳は化学同人),「The Madhouse Effect」,「The Tantrum That Saved the World」がある。
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「異常気象を招く 暴れるジェット気流」,J. マスターズ,日経サイエンス2015年3月号。
原題名
The Weather Amplifier(SCIENTIFIC AMERICAN March 2019)
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成層圏/ロスビー波/大気重力波/ケルビン波/ブロッキング高気圧/導波路/共振/WKB近似/北極温暖化増幅/エアロゾル