日経サイエンス  2019年7月号

ヒヒの群れに探る社会的きずなの健康学

L. デンワース(サイエンスライター)

「アンボセリ・ヒヒ研究プロジェクト」は精密な観察手法を使って野生のヒヒの行動を50年近く記録してきた。そのデータから,幼少期の逆境体験があるヒヒは早死にする傾向があることがわかった。一方,群れのなかで他の個体と強いつながりを構築したヒヒはそうした幼少期の経験を克服していることを示す証拠が得られた。安定した社会的絆が生物学的な健康に役立っている可能性があるという。こうした新たな考え方は,公衆衛生に関する理解と取り組みを変える可能性がある。人間も幼少期の逆境体験を持つ人は病気になりやすい傾向があるが,強い絆はそれを克服する助けになるだろうか?



再録:別冊日経サイエンス244「動物の行動と進化 環境が育んだ驚異」
再録:別冊日経サイエンス236「心と行動の科学」

著者

Lydia Denworth

ブルックリンを拠点とするサイエンスライター。著書に「I Can Hear You Whisper: An Intimate Journey Through the Science of Sound and Language」(ダットン,2014年)がある。現在,友情の科学についての本を執筆中。

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不平等が蝕む健康」,R. M. サポルスキー,日経サイエンス2019年5月号。

原題名

The Social Lives of the Amboseli Baboons(SCIENTIFIC AMERICAN January 2019)

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アンボセリ国立公園オランダ飢餓の冬研究,逆境的小児期体験(ACE)研究