
東京大学東京天文台は明治から昭和にかけて日本の天文学をリード,現在の国立天文台の母体となっている。ただ第二次世界大戦直後に始まった電波天文学,特に太陽の電波天文学にはもう1つ源流がある。今はなき名古屋大学空電研究所,略称「名大空電研」だ。天文の看板こそ掲げていないが,昭和時代,世界トップクラスの太陽電波天文台だった。高い精度と品質を誇る150台近くの電波望遠鏡はほぼすべて静岡県焼津の小さな鉄工所で作られた。その1台が生まれ故郷に戻り,名大空電研の名を後世に伝える天文遺産として展示されている。 (文中敬称略)
再録:別冊日経サイエンス245「天文遺産 宇宙を拓いた日本の天文学者たち」