日経サイエンス  2019年6月号

特集:睡眠とは何か

 人はなぜ眠くなるのか。直観的には,体に何かがたまっていくような気がするが,実際に何が起きているのかは長年の謎だった。このほど日本の研究グループが,眠気の正体が脳内にある80種類のタンパク質の化学変化であることをつきとめた。その多くはニューロンが信号をやり取りするシナプスにあり,記憶にも関係している可能性がある。一方,欧米の研究グループは,起きているときに記憶したことを,睡眠中に脳に刺激を与えることで定着させる試みで成果を上げている。眠っている間にも,脳は記憶や学習のプロセスを続けている。そのメカニズムを利用することで,これまでとは違った“睡眠学習”が可能になるかもしれない。
 
 
眠気の正体に脳科学で迫る  柳沢正史/詫摩雅子
実験で明かす睡眠と記憶  K. A. パラー/D. ウディエット