日経サイエンス  2019年5月号

特集:格差を科学する

格差が加速する環境破壊

J. K. ボイス(マサチューセッツ大学アマースト校)

貧しい人々は環境破壊からより大きな悪影響を被っている。環境の利用ないし乱用によって利益を得る人たちが害を被る人たちよりも経済的・政治的に強い力を持っている場合,この力のアンバランスは環境破壊を助長する結果になる。また,住民の経済力と政治力に大きな格差がある地域は環境破壊が激しくなる。20世紀の環境保護主義は自然を人間から守ることを目的としていたが,近年は環境破壊によって益を得る人々が及ぼす害悪から社会的弱者を守ることを目指す新たな環境保護主義が生まれている。



再録:別冊日経サイエンス249「科学がとらえた格差と分断 持続可能な社会への処方箋」
再録:別冊日経サイエンス236「心と行動の科学」

著者

James K. Boyce

マサチューセッツ大学アマースト校の名誉教授で,同校政治経済研究所のシニアフェロー。近著は「Economics for People and the Planet: Inequality in the Era of Climate Change」(Anthem Pressから近く出版予定)。

原題名

The Environmental Cost of Inequality(SCIENTIFIC AMERICAN November 2018)

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