日経サイエンス  2019年5月号

特集:格差を科学する

不平等が蝕む健康

R. M. サポルスキー(スタンフォード大学)

経済格差は健康の悪化と短命につながる。ただし,その理由は単に医療サービスを受けられないことや栄養不良ではない。貧富の差が大きいと慢性のストレスによる身体各部の劣化が激しくなることが,近年の研究で示された。そうした心理的ストレスは3つの道筋で身体に打撃を与える。炎症の継続,染色体を保護しているテロメアという部分の損傷,脳領域の障害だ。



再録:別冊日経サイエンス249「科学がとらえた格差と分断 持続可能な社会への処方箋」
再録:別冊日経サイエンス236「心と行動の科学」

著者

Robert M. Sapolsky

スタンフォード大学の教授(生物科学,神経学,神経科学)で,ケニア国立博物館のリサーチ・アソシエート。大学では,ストレスがどのように脳を害するかや,神経系の遺伝子治療について研究している。このほか,東アフリカの野生ヒヒ集団を調べて,ヒヒの社会順位と健康との関連を探っている。

関連記事貧困の病」,M. マーモット,日経サイエンス2016年9月号「ヘルス・トピックス」。

原題名

The Health-Wealth Gap(SCIENTIFIC AMERICAN November 2018)

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