日経サイエンス  2019年5月号

フロントランナー挑む 第91回

常識覆す新物質ハンター固体物理学に革新の波:十倉好紀

滝順一(日本経済新聞編集委員)

固体内の電子が互いに強い作用を及ぼす強相関電子系の物理学を開拓
既成概念を打ち破る物性を示す様々な新規物質を発見してきた
未来の情報処理やエネルギーにつながる新電磁気学の構築に力を注ぐ

 

 

 固体物理学の世界で静かな「革命」が起きている。電子が強く相互作用を及ぼしあう「強相関電子系」の物理学を基礎に既成概念を覆す新物質が次々と見つかってきた。理化学研究所創発物性科学研究センター(CEMS)を率いるセンター長の十倉好紀は先駆者。「創発的電磁気学」と呼ぶ新たな学問の建設を目指す。    (文中敬称略)

十倉好紀(とくら・よしのり)
理化学研究所創発物性科学研究センター。1954年生まれ。1976年東京大学工学部卒業,1981年東大大学院工学系研究科(物理工学専攻)博士課程修了,東大理学部物理学科助教授などを経て1994年東大大学院理学系研究科(物理学専攻)教授。2013年から理化学研究所創発物性科学研究センター長。2017年から東大卓越教授。仁科記念賞,日本学士院賞・恩賜賞など受賞。

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