日経サイエンス  2019年4月号

特集:分断の心理学

科学的思考を阻むバイアス

D. T. ケンリック A. B. コーエン S. L. ニューバーグ (いずれもアリゾナ州立大学)

科学的思考はしばしば好悪がないまぜになった反応にあう。確かな根拠に基づく研究結果にしかるべく耳を傾けてもらうには,事実を繰り返し示すだけでは不十分だ。人間には合理的な意思決定なしですまそうとする性癖があるので,むしろ逆効果になることすらある。人は誰しも,手っ取り早い思考法に頼り,既有の考えを強め,自分が属する様々な集団の仲間からの圧力に屈する傾向がある。そうした傾向に対抗するための戦略が,思考パターンを研究する心理学者によって考案された。
 

 
再録:別冊日経サイエンス236「心と行動の科学」

著者

Douglas T. Kenrick / Adam B. Cohen / Steven L. Neuberg / Robert B. Cialdini

いずれもアリゾナ州立大学に所属。ケンリックは心理学の教授で,利他行動から殺人幻想まで様々な行動を研究している。コーエンも心理学の教授で,宗教的信念の心理的基盤を研究。ニューバーグは心理学科長で,固定観念と先入観,宗教が意見衝突に及ぼす効果を研究。チャルディーニは心理学とマーケティングの名誉指導教授で,人々が日常の要請に従って行動する理由を探っている。

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巧みなセールストークを科学する」,R. B. チャルディーニ,日経サイエンス2001年5月号

原題名

The Science of Antiscience Thinking(SCIENTIFIC AMERICAN July 2018)

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