
科学的思考はしばしば好悪がないまぜになった反応にあう。確かな根拠に基づく研究結果にしかるべく耳を傾けてもらうには,事実を繰り返し示すだけでは不十分だ。人間には合理的な意思決定なしですまそうとする性癖があるので,むしろ逆効果になることすらある。人は誰しも,手っ取り早い思考法に頼り,既有の考えを強め,自分が属する様々な集団の仲間からの圧力に屈する傾向がある。そうした傾向に対抗するための戦略が,思考パターンを研究する心理学者によって考案された。
著者
Douglas T. Kenrick / Adam B. Cohen / Steven L. Neuberg / Robert B. Cialdini
いずれもアリゾナ州立大学に所属。ケンリックは心理学の教授で,利他行動から殺人幻想まで様々な行動を研究している。コーエンも心理学の教授で,宗教的信念の心理的基盤を研究。ニューバーグは心理学科長で,固定観念と先入観,宗教が意見衝突に及ぼす効果を研究。チャルディーニは心理学とマーケティングの名誉指導教授で,人々が日常の要請に従って行動する理由を探っている。
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「巧みなセールストークを科学する」,R. B. チャルディーニ,日経サイエンス2001年5月号
原題名
The Science of Antiscience Thinking(SCIENTIFIC AMERICAN July 2018)