日経サイエンス  2019年3月号

フロントランナー挑む 第89回

化学のものづくりに革新 自己組織化で応用目指す:藤田誠

遠藤智之(日本経済新聞)

分子が自然に集まり,複雑な構造を作る「自己組織化」で
整然とした構造を金属イオンと有機分子だけで実現することに成功
新薬の開発などに応用しようと,企業と研究に取り組む

 

東京大学教授の藤田誠は2018年5月,イスラエル国会議事堂にいた。ノーベル賞の前哨戦といわれるウルフ賞の授賞式に参加するためだ。化学部門での日本人の受賞は,名古屋大学特別教授の野依良治に続き2人目。ビーカーで金属イオンと有機分子を混合するだけで分子どうしが自然にくっつき,多面体などの整然とした複雑な構造を形成する「自己組織化」の手法を世界に先駆けて開発したことが評価された。「化学のものづくりを変えることができた」と話す藤田は今,この物質を新薬の開発などに応用しようと,企業と研究に取り組んでいる。 (文中敬称略)



再録:別冊日経サイエンス248『科学を仕事にするということ 未来を拓く30人』

藤田誠(ふじた・まこと)
東京大学教授。1957年東京都生まれ。1980年千葉大学工学部卒,1982年同大大学院修士課程修了,相模中央化学研究所研究員に。1987年博士号取得。千葉大学や名古屋大学などを経て2002年から現職。分子科学研究所卓越教授を兼任。2018年にウルフ賞(化学部門)を受賞した。

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