
11月末,ゲノム編集技術のヒトへの応用のルールづくりを議論する国際会議に参加するために集まった研究者たちの間に,突然の衝撃が走った。中国・南方科技大学の賀建奎氏が,ゲノム編集技術を使ってヒト受精卵の遺伝子を改変し,すでに双生児が生まれたとのニュースが飛び込んできたからだ。賀氏はこの会議で登壇し,エイズを引き起こすHIVに感染しないように遺伝子を改変した経緯を発表したが,医学的な必要性や安全性の検討に関して,厳しい質問が相次いだ。
賀氏は何を行い,何を行わなかったのか。ゲノムを編集された子の遺伝子はどう変わったのか。発表を聞いた専門家たちはどう受け止めたのか。同会議に参加した科学ライターが見て,聞いたことをリポートする。
訂正とお詫び
著者
詫摩雅子(たくま・まさこ)
日本経済新聞科学技術部,日経サイエンス編集部を経て,2011年4月より日本科学未来館に勤務。香港での「第2回ヒトへのゲノム編集に関する国際会議」において,ゲノム編集と社会の理解に関するセッションで発表するために参加した。
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「HIVに感染しない細胞」,C. ジェーン/B. レバイン,日経サイエンス2012年6月号。
「ゲノム科学を変えるCRISPR」,M. ノックス,日経サイエンス2015年3月号。