
脳と免疫系は,互いに関わりを持たず独立に機能すると長年考えられてきたが,近年,こうした“常識”を覆す発見が相次いでいる。遺伝子操作で獲得免疫をなくしたマウスは,筋萎縮性側索硬化症やアルツハイマー病が重症化しやすく,強いストレスを受けたときにPTSDを発症する確率が高まる。学習と記憶を必要とする課題もうまくこなせない。人間も病気のときは過剰に眠くなり,社会的な関わりを避けたくなるが,そうした行動変化も,免疫細胞が分泌するインターロイキンの影響かもしれない。脳が免疫系に異常を知らせる方法や,免疫細胞が放出するサイトカインが脳に運ばれるルートも見つかった。脳と免疫系は想像以上に密接に関係しているようだ。
免疫系が脳を動かす J. キプニス
精神疾患の新しいモデル ミクログリア仮説 加藤隆弘/神庭重信