
アンモニアは肥料向けを中心に膨大な量が生産されている
だが,その原理は100年前と変わらずエネルギー消費が大問題
長年の課題を解決しようと画期的な触媒の研究に取り組む
可能な限り低い温度で,圧力もできるだけ加えず,窒素と水素を効率よく反応させる—。東京工業大学で触媒を研究する原亨和が最も力を入れている研究だ。できあがる物質はアンモニア。窒素肥料の原料用を中心に,世界で年間約2億トンに迫る膨大な量が生産されている。現在の合成には高温高圧の条件が必要で,エネルギー消費のより少ない反応が長年求められてきた。原は「化石資源はできるだけ使わない。それがサバイバル・ケミストリーの基本方針だ」と熱く語る。 (文中敬称略)
再録:別冊日経サイエンス248『科学を仕事にするということ 未来を拓く30人』
原亨和(はら・みちかず)東京工業大学教授。1965年生まれ。1986年東京理科大学卒業。1992年東京工業大学博士課程修了,理学博士号取得。東芝を経て東工大助手,米ペンシルベニア州立大学博士研究員。2000年東工大助教授。2006年から現職。専門は触媒化学,表面化学,材料科学。米SCIENTIFIC AMERICANの「世界のベスト50研究者」に選ばれた。文部科学大臣科学技術賞,日本化学会学術賞など受賞。