
初期宇宙では場所によってはガスが超音速で流れていた。この“暴風域”が宇宙の進化にどのような役割を果たしたのか,研究が進んでいる。今回,暴風域の中に暗黒物質の高密度域が存在する場合,宇宙誕生から約1億年後,太陽の数万倍の質量を持つ桁外れの超巨大星が100万年ほどで誕生し,それが大爆発を起こすことなく,そのままブラックホールに転じることが,大規模な数値シミュレーションで明らかになった。これまでの観測から,宇宙誕生から10億年もしない銀河に太陽の10億倍以上の質量がある巨大ブラックホールが存在していることがわかってきたが,暴風域で生まれた数万太陽質量のブラックホールが周囲から物質を吸い込んで,こうした巨大ブラックホールへと成長したと考えれば,うまく説明がつく。
著者
中島林彦 / 協力:吉田直紀
中島は日本経済新聞記者。吉田は東京大学大学院理学系研究科教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構特任教授を兼務。専門は宇宙論。スーパーコンピューターを用いた大規模数値シミュレーションで宇宙の進化を探っている。一般向けの著書に『ムラムラする宇宙』(学研,2014年)などがある。
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
巨大ブラックホール/超大質量ブラックホール/中間質量ブラックホール/暗黒物質/超音速流/暗黒物質ハロー/アテルイ/初代星/原始星/宇宙マイクロ波背景放射