日経サイエンス  2018年10月号

特集:巨大ブラックホール 爆誕の謎

初期宇宙のドラマを再現

中島林彦(日本経済新聞) 協力:吉田直紀(東京大学)

初期宇宙では場所によってはガスが超音速で流れていた。この“暴風域”が宇宙の進化にどのような役割を果たしたのか,研究が進んでいる。今回,暴風域の中に暗黒物質の高密度域が存在する場合,宇宙誕生から約1億年後,太陽の数万倍の質量を持つ桁外れの超巨大星が100万年ほどで誕生し,それが大爆発を起こすことなく,そのままブラックホールに転じることが,大規模な数値シミュレーションで明らかになった。これまでの観測から,宇宙誕生から10億年もしない銀河に太陽の10億倍以上の質量がある巨大ブラックホールが存在していることがわかってきたが,暴風域で生まれた数万太陽質量のブラックホールが周囲から物質を吸い込んで,こうした巨大ブラックホールへと成長したと考えれば,うまく説明がつく。
 

 
再録:別冊日経サイエンス241「巨大ブラックホール 宇宙と銀河の進化を探る」

著者

中島林彦 / 協力:吉田直紀

中島は日本経済新聞記者。吉田は東京大学大学院理学系研究科教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構特任教授を兼務。専門は宇宙論。スーパーコンピューターを用いた大規模数値シミュレーションで宇宙の進化を探っている。一般向けの著書に『ムラムラする宇宙』(学研,2014年)などがある。

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