
世界中の科学者が原子よりも小さなレベル,電子やさらにはそれ以下のレベルで自然を制御するという難題に取り組んでいる。物質とエネルギーの基本的特性を変える“調節つまみ”を見つけ出し,そのつまみを回して物質とエネルギーを操り,超高速の量子コンピューターや室温超電導体を実現するのが目的だ。
主な難題は2つ。まず,技術的に非常に難しい。例えば容器の内部を宇宙空間よりも真空度の高い状態にして,そこで純度99.99999999%の結晶を作る必要がある。より根本的な困難は,利用しようとする量子効果(1個の粒子が同時に2つの状態を取るなど)が個々の電子のレベルで生じ,日常の巨視的世界ではそのマジックが効かなくなることだ。
したがって,最小スケールで物質を操作するこれらの研究は,根本的な物理によって課せられた限界に対抗しながら自然を何とか制御しようとする挑戦だ。これがどの程度成功するかによって,今後数十年に科学的理解と技術的能力がどう進展するかが決まってくるだろう。
著者
Neil Savage
マサチューセッツ州ローウェル在住の科学ジャーナリスト。
原題名
What Are the Limits of Manipulating Nature?(SCIENTIFIC AMERICAN June 2018)
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