
地球生命の存在は幸運な偶然なのか,それとも自然法則の必然の結果か? 新たに生まれた惑星に生命が出現するのは容易なことなのか,それともおよそ起こりそうにない事象が重なった末の奇跡的な結果なのか? 天文学から惑星科学,化学まで異なる科学分野の進歩によって,これらの大きな疑問に遠からず答えられそうになってきた。科学者が期待しているように天の川銀河で生命が何度も出現したと判明すれば,生命出現の道はそれほど厳しくはないはずだ。さらに化学物質から生命に至る経路が容易に通過できるものである場合,宇宙は生命であふれている可能性がある。
何千もの系外惑星の発見が生命起源の研究に新風を吹き込んだ。実に驚くべきことに,新発見の惑星系は私たちの太陽系とはまるで違っていた。これは,太陽系に備わっている非常に特殊な何かが生命出現に好都合だったことを意味しているのだろうか? 遠い星を周回する惑星に生命の兆候を検出するのは容易ではないだろうが,かすかなバイオシグネチャー(生命痕跡)を見つけ出す技術の開発が急速に進んでおり,うまくすると10年か20年のうちに検出できるかもしれない。
著者
Jack Szostak
ハーバード大学医学部教授。2009年にノーベル生理学・医学賞を共同受賞。
関連記事「生命の起源」,A. リカルド/J. W. ショスタク,2009年12月号。
「生命の陸上起源説」M. J. ヴァン・クラネンドンク/D. W. ディーマー/T. ジョキッチ,2018年3月号。
原題名
How Did Life Begin?(SCIENTIFIC AMERICAN June 2018)