日経サイエンス  2018年5月号

バイオ医薬品のハードル 薬を排除する免疫

M. ウォルドホルツ(ジャーナリスト)

がんや心臓病,自己免疫疾患を治療する最新の薬剤には天然のタンパク質を模倣したものがあり,バイオ医薬品(生物学的製剤)と呼ばれる。化学合成された従来の薬よりも優れたものが多いが,厄介な問題が浮上してきた。投与されたバイオ医薬品に人体の免疫系が反応して「抗薬物抗体」を作り出し,その薬を攻撃して効果を弱めてしまうのだ。開発中のものを含めバイオ医薬品が増え続けるなか,せっかくの薬を損なうこの問題はますます深刻化している。抗薬物抗体を阻止する新戦略として,ワクチンに似た技術を用いて人体の免疫系を訓練し,医薬品を攻撃しないようにする方法などが研究されている。
 

 
再録:別冊日経サイエンス234「最新免疫学 がん治療から神経免疫学まで」

著者

Michael Waldholz

ジャーナリスト。エイズに関する報道で1997年にピュリツァー賞を受賞した取材チームを率いた。ニューヨーク州ハドソンバレー在住。

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開発進むナノ抗体医薬」,W. W. ギブズ,2006年1月号。

原題名

War against Ourselves(SCIENTIFIC AMERICAN January 2018)

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