日経サイエンス  2018年5月号

特集:仮想通貨の科学

ブロックチェーンが変える世界

A. リプトン A. ペントランド(ともにマサチューセッツ工科大学)

現在の金融システムは危険なまでに複雑化している。透明性を増せばリスクを減らせるだろうが,それには貨幣循環を詳細にモデル化する必要があり,現在の技術では難しい。だが,デジタル通貨などの新技術によって,すべての取引と送金をシミュレートすることが可能になり始めた。より効率的な金融ネットワークを構築して貨幣の管理を非集中化できるだろう。銀行に頼らずに個人どうしが直接にお金を交換できる。大変化が起こる可能性があるが,不確実性も多い。これらのデジタル網は,適切に構築し責任を持って運用して初めて,公平性と説明性を高められる。悪くすると,極端な中央管理につながる恐れが同じくらいある。

著者

Alexander Lipton / Alex “Sandy” Pentland

リプトンはストロングホールド・ラブズ社の創設者・最高経営責任者でマサチューセッツ工科大学のコネクション・サイエンス・フェロー。以前はバンク・オブ・アメリカに管理職として勤務しつつ,英オックスフォード大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンの客員教授を務めていた。2000年にクワント・オブ・ザ・イヤー賞を受賞。

ペントランドはマサチューセッツ工科大学の教授。コンピューター科学分野で論文引用数の非常に多い科学者で,全米アカデミーズ会員。Forbes誌は2011年,世界で最も有力なデータ科学者7人の1人に彼を選んだ。近著は『ソーシャル物理学』(邦訳は草思社)。

原題名

Breaking the Bank(SCIENTIFIC AMERICAN January 2018)

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