日経サイエンス  2018年5月号

特集:暗黒物質の正体

宇宙に潜む原始ブラックホール

J. ガルシア=ベジード(スペイン・マドリード理論物理学研究所) S. クレッセ(独アーヘン工科大学)

暗黒物質(ダークマター)は重力で銀河をまとめていると考えられる目に見えない物質だが,その正体は謎だ。多くの研究者が暗黒物質は「弱い力に似た相互作用をする重い粒子」(WIMP)だろうと考え,実験でそうした粒子を探してきたが,これまでのところ見つかっていない。もう1つの候補は宇宙誕生直後に生じたと考えられる「原始ブラックホール」だが,これもいまのところ検出されていない。今後,重力波検出器などの観測装置がとらえた新データから原始ブラックホールの証拠が出てくる可能性がある。存在が確かになった場合,暗黒物質の謎のほか,宇宙論の他の難題も解決する可能性がある。

著者

Juan García-Bellido / Sébastien Clesse

ガルシア=ベジードはスペインのマドリード理論物理学研究所の教授を務める理論物理学者。初期宇宙,暗黒エネルギー,ブラックホール,量子重力に関心を持っている。また暗黒エネルギーサーベイや,欧州宇宙機関のユークリッド・ミッションとレーザー干渉計宇宙アンテナ(LISA)のプロジェクトメンバーとしても活動している。クレッセはベルギー出身の宇宙論研究者で,ドイツのアーヘン工科大学のポスドク研究員。インフレーションや修正重力理論,原始ブラックホールなどを研究している。ユークリッド・ミッションとスクエア・キロメートル・アレイのプロジェクトメンバーでもある。

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ダーク銀河の謎」B. A. ドブレスク/D. リンカーン,2015年10月号

原題名

Black Holes from the Beginning of Time(SCIENTIFIC AMERICAN July 2017)

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