
1型糖尿病は2型と違って食事とは無関係に発症し,遺伝的要因と環境要因の両方が関与している。先進国では衛生設備の改善につれてポリオや1型糖尿病など特定の疾患の罹患率が上昇した経緯がある。これは幼少期に病原体に曝露する機会が減り,免疫系が育たなくなったとする「衛生仮説」で説明可能だ。実際,未処理の下水中によく見られるある種のウイルスは,感染時の年齢に応じて1型糖尿病の発症を助長したり予防したりするようだ。こうしたウイルスに基づいてワクチンを作れば,1型糖尿病の遺伝的リスクを持つ人の発症を予防できる可能性がある。
再録:別冊日経サイエンス250「『病』のサイエンス」
再録:別冊日経サイエンス234「最新免疫学 がん治療から神経免疫学まで」
著者
Kristen M. Drescher / Steven Tracy
ドレッシャーはクレイトン大学の医微生物学と免疫学の教授。自己免疫疾患におけるウイルスの役割を研究し,炎症性疾患の新しい治療法を探究している。トレイシーはネブラスカ大学医療センターの病理学および微生物学の名誉教授。エンテロウイルスの分子生物学や,そうした病原体が心筋炎や1型糖尿病に及ぼす影響を研究している。
原題名
Vanquishing Diabetes(SCIENTIFIC AMERICAN February 2018)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
衛生仮説/エンテロウイルス/自己免疫疾患/コクサッキーB群ウイルス/NODマウス/制御性T細胞