
国立天文台三鷹キャンパスの奥まった場所に100年近く前にできたとは思えない斬新なカマボコ形の天文ドームがある。ドームの主の古風な望遠鏡もユニークな姿で,長さ約3mの鏡筒の両側に大きな水車のような構造が見られる。仏ゴーチェ社が明治36年(1903年)に製作した口径20cm屈折望遠鏡で「ゴーチェ子午環」という。天球上の恒星の位置や惑星の動きの精密測定に大きな役割を果たしたが,本格稼働したのは作られてから四半世紀以上も過ぎてからのことだった。(文中敬称略)
再録:別冊日経サイエンス245「天文遺産 宇宙を拓いた日本の天文学者たち」