
生命は太古の海で誕生したというのが通説で,深海底の熱水噴出域が有力候補地と考えられている。これに対し,生命は陸上の温泉周辺の水たまりで誕生したのではないかとの陸上起源説を支持する研究者も多い。そうした水たまりでは,海中と違って水が蒸発して物質を濃縮するプロセスが繰り返されている。この乾湿サイクルによって生命の素材となる高分子が合成されたという説だ。また近年,細胞サイズもゲノムも非常に小さく,生命に必須とされる遺伝子の多くが欠損している奇妙な微生物が地下深部で繁栄していることがわかってきた。それらは陸上で誕生した初期生命の姿を今に伝える“生きている化石”なのかもしれない。
生命の陸上起源説
M. J. ヴァン・クラネンドンク/D. W. ディーマー/T. ジョキッチ
地下にいた始原生命体 中島林彦 協力:鈴木庸平/鈴木志野