日経サイエンス  2018年1月号

心のなかの独り言 内言の科学

C. ファニーハフ(英ダラム大学)

「今日は午前中にあの仕事を片づけるぞ」と気合いを入れたり,「こんなミスをするなんてバカだなあ」と自分を叱ったり,私たちは頭のなかで声にならない独り言をつぶやくことが多い。自分に語りかけるこの独り言は「内言」と呼ばれ,行動の計画や感情の制御など重要な機能を助けていると考えられる。ただ,頭のなかのつぶやきなので,これを正確にとらえて調べるのは極めて難しい。科学的な研究はほとんど進んでいなかったが,より進んだ心理学実験手法と脳画像撮影技術などを用いた解析がようやく可能になってきた。内言の基礎となっている神経機構の一部が明らかになり,精神に関する長年の謎に光が当たっている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス230「孤独と共感 脳科学で知る心の世界」

著者

Charles Fernyhough

英ダラム大学の心理学の教授。児童発達や記憶,幻覚を研究している。ノンフィクションおよびフィクションの著作があり,近著「The Voices Within」(Basic Books,2016年)はセルフトークを扱っている。

原題名

Talking to Ourselves(SCIENTIFIC AMERICAN August 2017)

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