日経サイエンス  2018年1月号

特集:性とジェンダーの科学(後編)

男女関係の神話

C. ファイン M. A. エルガー(ともに豪メルボルン大学)

古典的な進化論的説明によると,男女の行動の違いは進化の過程で獲得した動物全般に見られる行動パターンを反映している。この見方によれば,多くのジェンダーギャップは“自然”だ。例えば男性は向こう見ずで多くの女性と関係を持ちたがるといわれるが,これは男性が生殖能力を最大限に引き出すためにリスクを顧みず競争心旺盛になったと考える。だが,この説明の基礎をなす仮定の多くが間違っていることが近年の研究で示された。また,進化を通じて獲得された行動の発現に環境要因が重要な役割を果たすことがある。



再録:別冊日経サイエンス260『新版 性とジェンダー』

著者

Cordelia Fine / Mark A. Elgar

ファインはオーストラリアのメルボルン大学で科学史・科学哲学の教授を務めている。豪女性リーダーシップ研究所のフェロー。最新著書は「Testosterone Rex: Myths of Sex, Science, and Society」(W. W. Norton, 2017年)。エルガーはメルボルン大学の進化生物学の教授。彼の研究チームは協力行動と交尾行動の進化的重要性に関する問題に重点的に取り組んでおり,化学的・視覚的コミュニケーションがそうした行動の促進に果たす役割について研究している。

原題名

Promiscuous Men, Chaste Women and Other Gender Myths(SCIENTIFIC AMERICAN September 2017)

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