日経サイエンス  2018年1月号

特集:統合失調症に挑む

統合失調症というと特殊で恐ろしい精神病のイメージが強いが,実は全人口の約1%が発症するかなり一般的な精神疾患だ。原因がわかっていないため根本的な治療法がなく,患者や家族はもちろん,社会に大きな負担となっている。そこで大勢の人のゲノムを比較解析して原因遺伝子を突き止めようとする研究が欧米で10年ほど前から始まった。だがこれまでの成果は期待はずれで,新治療法につながる単一の原因遺伝子は存在せず,この病気の遺伝的背景が極めて複雑であることが明らかになった。一方,そうした網羅的な探索ではなく,症状の明確な患者群に的を絞った日本の研究から,この病と強く関連する遺伝子が浮かび上がっている。

 

 

ゲノム解析でわかった複雑さ  M. バルター

新しい治療の糸口 カルボニルストレス  糸川昌成/新井誠/宮田敏男