
人工知能(AI)技術の急進展で,フェイク動画やフェイク音声の自動生成が可能になっている。ソーシャルメディアを通じた偽情報の拡散は,国民一般の論議や政治的安定性に重大な影響を与えかねない。コンピューター科学者はフェイク動画を検出して目印をつけるAIの開発に取り組んでいるが,改竄能力に追いついていない。一方,社会科学者は事後にフェイクを取り締まる方法では不十分だと警告している。文章に書かれたフェイク記事と比べ,フェイク動画は恐怖を掻き立てるのに特に有効であり,その恐怖感が偽情報を拡散する力となることが研究から示唆されている。この結果,事実を伝えているものを含めすべてのメディアに対する信頼が損なわれかねないのが問題だ。
再録:別冊日経サイエンス251『「戦争」の現在 核兵器・サイバー攻撃・安全保障』
再録:別冊日経サイエンス239「人工知能 機械学習はどこまで進化するのか」
著者
Brooke Borel
ジャーナリスト。著書に「The Chicago Guide to Fact-Checking」がある。最近,人工知能ファクトチェッカーと腕試しの勝負をして勝ったが,僅差の勝利だった。
原題名
Clicks, Lies and Videotape(SCIENTIFIC AMERICAN October 2018)
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フェイク動画/ディープラーニング(深層学習)/敵対的生成ネットワーク/FakeApp/ディープフェイク/デジタル署名