日経サイエンス  2018年1月号

特集:マルチメッセンジャー天文学の幕開け

編集部

 星が発する光(電磁波)は星の情報を伝えるメッセンジャーだ。光を調べることで,星の組成や動き,星までの距離,さらにはどんな惑星が存在するのかさえわかることもある。光と違って目には見えないが,星はニュートリノという素粒子や,時空の歪みが波として伝わる重力波を放射することもあり,それらも重要なメッセンジャーだ。天体現象を光やニュートリノ,重力波などで多角的に調べる学問を「マルチメッセンジャー天文学」という。つい最近,この分野で大成果が発表された。コンパクトな高密度天体,「中性子星」2つからなる連星が強い重力波を発しながら合体,ガンマ線や赤外線などで明るく輝く様子が観測され,金や白金,ウラン,レアアースなどの元素が誕生する現場が捉えられたのだ。

 

 
重力波の本命 連星中性子星合体を観測  中島林彦 協力:田中貴浩
貴金属の起源をとらえた  中島林彦 協力:田中雅