
ニュートリノは,存在が知られている素粒子の中で最も理解が進んでいない粒子だろう。電荷がなく捕捉しにくいニュートリノは,他の粒子とほとんど相互作用しないため,かつては質量ゼロだと考えられていた。現在ではきわめて小さな質量を持つことがわかっているが,その質量獲得の仕組みは謎のままだ。現在建設中のDUNE実験は,イリノイ州から発射したニュートリノビームを1300km離れたサウスダコタ州で検出するという野心的なプロジェクトだ。 ニュートリノは長距離を飛行する間に種類が変わる(ニュートリノ振動)。この奇妙な挙動を調べることで,ニュートリノの質量の起源やその他の難問を解明できると期待されている。
監修:塩澤眞人(しおざわ・まさと)東京大学宇宙線研究所教授。ハイパーカミオカンデのプロジェクトリーダー。専門は素粒子物理学。スーパーカミオカンデを使ってニュートリノの研究に取り組んできた。T2K実験を主導する京都大学の中家剛教授,高エネルギー加速器研究機構の小林隆教授とともに第6回戸塚洋二賞を受賞。
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「ニュートリノで探る物質の起源」,M. ヒルシュほか,日経サイエンス2013年8月号。
原題名
The Neutrino Puzzle