
ニュートリノは他の粒子とほとんど相互作用せず,地球でさえも素通りする。かつて質量ゼロとされたが,ニュートリノが飛行中に種類を変える「ニュートリノ振動」現象が捉えられたことで,超微小の質量を持つことが明らかになった。この幽霊のようなニュートリノが宇宙の進化の研究で注目を集めている。誕生時の宇宙は物質と反物質がきっかり同量生じたはずなのに現在の宇宙は物質ばかりなのはなぜか? そのカギを握るのがニュートリノとみられるからだ。消えた反物質の謎を解こうと,ニュートリノ振動を用いた大がかりな実験の準備が日米で進んでいる。米国のDUNE実験と日本のハイパーカミオカンデ実験だ。両実験を詳しく紹介するとともに,ニュートリノ振動の発見者である梶田隆章博士に研究展望を聞いた。
反物質が消えた謎 米国が挑むDUNE実験 C. モスコウィッツ
日本のハイパーカミオカンデ始動へ 中島林彦 協力:塩澤眞人
梶田隆章が語る研究展望 存在感高まる中国,韓国 語り:梶田隆章