
患者の免疫機能を増強してがんを攻撃する免疫療法は,古くから様々に試みられてきた。だがその効果ははっきりせず,「効かない治療」の代名詞にもなってきた。だが近年,状況は一変した。きっかけは2014年7月に認可された「ニボルマブ」(商品名オプジーボ)だ。一部のがんに対してはこれまでにない効果がみられ,免疫療法は手術,放射線治療,化学療法に続く,ガン治療の第4の柱として期待を集めるようになった。
そして8月末,米食品医薬品局(FDA)は,スイスのノバルティスが開発したCAR-T細胞「CTL019」(商品名キムリア)を,難治性または再発をくり返すB細胞性急性白血病の治療薬として認可した。患者から取った免疫細胞,T細胞の遺伝子を改変し,白血病細胞に結合しやすくした“スーパーT細胞”だ。患者に点滴すると,白血病細胞の表面にある受容体のタンパク質を目印に結合し,活性酸素などを出して白血病細胞を死滅させる。臨床試験では高い効果が得られ,FDAも承認を急いだ。だが大きな課題が2つ残っている。コストと安全性だ。
著者
宮田満(みやた・みつる)
日経BP特命編集委員。東京大学大学院植物学修士課程修了。日経バイオテク編集長,医療局バイオセンター長などを経て現職。慶應義塾大学先端生命科学研究所客員教授,三重大学大学院地域イノベーション学研究科客員教授。
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「がん免疫療法の新アプローチ」 J. D. ウォルコック,日経サイエンス2015年1月号。
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