日経サイエンス  2017年8月号

キツネがイヌに化けるまで

L. トルート(細胞学・遺伝学研究所=ロシア) L. A. デュガトキン(ルイビル大学)

「人類最良の友」といわれるイヌは野生のオオカミを人間が家畜化したものと考えられているが,具体的にどう飼い慣らしたのか,どのくらいの期間がかかったのかなど,その詳細は歴史のなかに失われてしまった。そこでオオカミからイヌへの進化を再現することを目指し,60年がかりの実験がロシアで行われてきた。オオカミの代わりに別のイヌ科動物である野生のキツネを用い,従順な個体を数十世代にわたって選抜育種した。すると,わずか数世代のうちに,ぶち入りの毛皮や巻き上がった尻尾など,家畜化に伴う特徴を持ちペットのように振る舞うキツネが出現したという。その後もますます人なつこいキツネが育っている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス226「動物のサイエンス 行動,進化,共存への模索」

 

著者

Lyudmila Trut / Lee Alan Dugatkin

トルートはロシアのノボシビルスクにある細胞学・遺伝学研究所の教授を務める進化遺伝学者。1958年から同研究所でキツネの家畜化実験を続けている。デュガトキンはルイビル大学に所属する行動生態学者・科学史家。過去6年,キツネ家畜化研究に関する書籍の執筆にトルートとともに取り組んできた。この記事はトルートの話に基づいてデュガトキンが執筆した。

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オオカミからイヌへ」,V. モレル,日経サイエンス2015年11月号。
Dogging It: Turning Wild Foxes into Man's Second-Best Friend
著者のデュガトキンがキツネの家畜化研究について語ったポッドキャスト

原題名

How to Build a Dog(SCIENTIFIC AMERICAN May 2017)

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