日経サイエンス  2017年8月号

特集:ブラックホールをあぶり出せ

星を引き裂く姿 潮汐破壊現象

S. B. センコ(米航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター) N. ゲーレルズ(米航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター)

超大質量ブラックホールに近づきすぎた恒星は,その強大な潮汐力によって引き裂かれてバラバラになり,ブラックホールに呑み込まれる。この現象は潮汐破壊現象と呼ばれ,現在行われている複数の広域掃天観測プロジェクトによって詳しく調べられるようになった。その結果,超大質量ブラックホールが天体を呑み込む過程や,引き寄せた物質の一部を光速に近い速度まで加速させてジェットとして噴射させるメカニズムの研究が大きく進展した。超大質量ブラックホールの成長が周辺銀河に及ぼす影響についても理解が深まった。
 

 
再録:別冊日経サイエンス241「巨大ブラックホール 宇宙と銀河の進化を探る」

著者

S. Bradley Cenko / Neil Gehrels

センコはNASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙物理学者。天文衛星スウィフトのプロジェクト・サイエンティスト補佐を務める。地上望遠鏡と宇宙望遠鏡による広域掃天観測で宇宙の進化について研究している。ゲーレルズはNASAゴダード宇宙飛行センターの宇宙素粒子物理学研究室のリーダーで天文衛星スウィフトの研究代表者。広視野赤外線宇宙望遠鏡WFIRSTとガンマ宇宙線望遠鏡フェルミのプロジェクト・サイエンティストを兼任していた。本記事がSCIENTIFIC AMERICAN誌上に掲載される直前の2017年2月に死去。

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ブラックホールの容貌を撮る」,A. E. ブロデリックほか,日経サイエンス2010年3月号。
時空の終端 ファイアウォール」,J. ポルチンスキー,日経サイエンス2015年7月号。

原題名

How to Swallow a sun(SCIENTIFIC AMERICAN April 2017)

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