日経サイエンス  2017年8月号

フロントランナー挑む 第71回

古代魚を使って探る遺伝子,細胞,種の進化:神田真司

詫摩雅子(科学ライター)

ほとんどの魚は進化の過程で「全ゲノム重複」を経験している
すべての遺伝情報がそっくり倍になる現象だ
それを経験しなかった古代魚を使って“誰もやらない”研究に挑む

 

 
 メダカの入った水槽がずらりと並ぶ。生物学の研究室としては珍しい光景ではない。研究によく使われるモデル動物だからだ。しかし,別の飼育室には,人工繁殖の方法も確立していない古代魚ポリプテルス(右下の写真)がいる。研究室の動物としてはかなり異色の存在だ。東京大学の神田真司はこうした魚を使い分けながら,遺伝子の変化がどのように細胞の機能の変化,さらには種の進化につながったのかを解明しようとしている。    (文中敬称略)
 

 
再録:別冊日経サイエンス233「魚のサイエンス」

神田真司(かんだ・しんじ)
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 准教授。1982年神奈川県生まれ。2005年国際基督教大学教養学部理学科を卒業後,東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻に進み,2010年に博士課程修了。東京大学で特任研究員,特任助教,助教を経て2016年より現職。

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