日経サイエンス  2017年7月号

炭疽菌兵器の恐怖

P. S. カイム(北アリゾナ大学) D. H. ウォーカー(テキサス大学) R. A. ジリンスカス(ミドルベリー国際大学院)

1979年,ロシア中央部のスベルドロフスク(現エカテリンブルク)という都市で炭疽菌によって数十人が死亡した。後に,これが旧ソ連の生物兵器施設の事故で漏れ出した菌が原因だったことが明らかになった。炭疽菌は生物兵器に特に適している。旧ソ連が行っていたこのプログラムの一部は1990年代に停止されたが,近年に明らかになった事実から,新たな懸念が浮上した。ロシア政府が国際条約に反して生物兵器計画を再開している可能性があるという。事故以来これまで長年にわたる調査は,多少のバイオ産業能力を持つ国(あるいはテロ組織)なら生物兵器を密かに開発するのはそれほど難しくないことを示している。



再録:別冊日経サイエンス251『「戦争」の現在 核兵器・サイバー攻撃・安全保障』

著者

Paul S. Keim / David H. Walker / Raymond A. Zilinskas

原題名

Time to Worry about Anthrax Again(SCIENTIFIC AMERICAN April 2017)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

芽胞肺炭疽腸炭疽皮膚炭疽生物兵器禁止条約