日経サイエンス  2017年7月号

特集:トランプVS科学

トランプの激震

川合智之(日本経済新聞ワシントン支局)

「米環境保護局(EPA)や農務省は1月,傘下の研究者に対し,研究成果報告や写真,資料などを公表しないよう通告した。EPAの研究部門が運営していたツイッターは,政権交代前には1日数件を投稿していたが,新政権が発足した1月20日以来,独自の投稿を停止している。EPAの広報室の電話はずっと留守番電話のままで,記者が正面からEPAに接触する方法はなくなった。トランプ政権発足時,政権移行チームはエネルギー省に対し,こんな指示を出した。『前政権で地球温暖化対策に携わった職員や研究者の名簿を提出せよ』。」(本文より)

 

トランプ政権を最前線で取材する米ワシントン支局の川合智之記者が,政権の科学政策を徹底解説する。3月にトランプ氏が示した2018会計年度の科学予算方針の詳細や,環境・エネルギー,医学,宇宙の各分野への影響を分析。政権によるトランプ氏の主張に合わない記述の削除や書き変えの動きと,これに対抗する科学者らの取り組みを報告する。またプルイット(Scott Pruitt)EPA長官やペリー(Rick Perry)エネルギー省長官,バノン(Steve Bannon)首席戦略官・上級顧問ら,政権幹部の顔ぶれと科学に関する発言などを網羅し,政権の科学に対する姿勢を浮き彫りにする。

 

国際政治学者で科学技術と政治の関係に詳しい鈴木一人・北海道大学教授へのインタビュー「非合理が合理性に勝った選挙」,科学界のご意見番,物理学者のクラウス(Lawrence M. Krauss)アリゾナ州立大学教授による「『科学のための行進』か『現実のための行進』か」を併せて掲載する。