
冠動脈が詰まって心臓の筋肉が損なわれる心筋梗塞は命にかかわる恐ろしい疾患だ。その治療や予防に,閉塞した血管に迂回路を設けるバイパス手術や閉塞部を広げる器具を挿入する処置が取られるのはよく知られている。だが,冠動脈にはバイパス路となりうる血管が自然に備わっている。「側副血管」と呼ばれるものだ。通常は血液が流れていない“陰の血管”なのだが,窮地に陥ると新たに側副血管が成長して血液を送り届ける。ただ,理由はよくわかっていないが,多くの心疾患患者は十分な側副血管を形成できない。そこで,側副血管の形成を促す遺伝子治療や幹細胞療法が試されている。うまくいけば,狭心症や心筋梗塞を防ぐのに役立つだろう。
再録:別冊日経サイエンス250「『病』のサイエンス」
著者
Gabor Rubanyi
医師で,心臓に新たな血管を発達させる遺伝子治療の開発に取り組む企業アンジオネティクスの共同設立者。
関連記事
「遺伝子治療が医療を革新」,R. ルイス,日経サイエンス2013年9月号
原題名
Heart Therapy(SCIENTIFIC AMERICAN January 2017)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
冠動脈/動脈硬化/狭心症/副側血管/遺伝子治療/成体幹細胞/血管内皮細胞増殖因子/線維芽細胞増殖因子