日経サイエンス  2017年5月号

ついに見えたHIV予防ワクチン

R. W. サンダース(蘭アムステルダム大学) I. A. ウィルソン(スクリプス研究所) J. P. ムーア(コーネル大学医学部)

HIVの感染を防ぐワクチンはいまだにできていない。ワクチンとして使うのに適したウイルスのエンベロープ(外被)タンパク質が,どう合成してもすぐに分解してしまうのが一因だ。そうしたバラバラのタンパク質では,免疫系を刺激して抗体を作らせることができない。著者たちは20年近い研究の末,HIVのエンベロープを模した安定した人工タンパク質を作り出した。動物実験で有効な抗体を誘導できている。
 

 
再録:別冊日経サイエンス234「最新免疫学 がん治療から神経免疫学まで」

著者

Rogier W. Sanders / Ian A. Wilson / John P. Moore

サンダースはアムステルダム大学学術医療センターのウイルス学教授で,ニューヨークにあるコーネル大学医学部の客員教員でもある。HIVに対する新規ワクチンを研究している。ウィルソンはスクリプス研究所の統合構造計算生物学部門の部門長と教授を務める。現在,HIVやインフルエンザ,C型肝炎などのウイルスと免疫系との物理的相互作用を正確にモデル化する研究を行っている。ムーアはコーネル大学医学部の微生物学の教授で,1988年からHIVワクチンの研究を行っている。

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ワクチン開発は続く」,D. I. ワトキンス,日経サイエンス2009年2月号。

原題名

HIV’s Achilles’ Heel(SCIENTIFIC AMERICAN December 2016)

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