日経サイエンス  2017年5月号

特集:言語学の新潮流

口笛言語

J. メイエ(フランス国立科学研究センター)

通常の言葉を口笛で表現して伝える「口笛言語」をご存じだろうか。スペイン領カナリア諸島の「シルボ・ゴメーロ」など少数が知られるだけだったが,著者らの近年の研究でギリシャや中南米,東南アジアなど世界各地の約70の集団がいまも使っていることがわかった。口笛の音は単純だが,通常の発話や叫び声よりも遠くまで伝わる。また,口笛の音が伝える意味に関する言語学的な研究が進み,鳥のさえずりのような“言葉”を人々がどう理解しているのか,脳の情報処理を探る手立てにもなっている。さらに,文化遺産として口笛言語を保存・伝承する活動が広がり,カナリア諸島では現在,シルボ・ゴメーロを学校で教えている。

 

 

関連動画口笛版ギリシャ語の録音

著者

Julien Meyer

フランス国立科学研究センター(CNRS)およびグルノーブルにあるGIPSA-labに所属する言語学・生物音響学者で,音声学と言語認識,地方社会と言語について研究している。アイコン・エコ・スピーチ・プロジェクトを率いているほか,口笛言語の録音と保存に取り組む世界口笛研究協会の創設メンバー。

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消滅する言語」,W. W. ギブス,日経サイエンス2002年11月号。

原題名

The Whistled Word(SCIENTIFIC AMERICAN February 2017)

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